ヒトの腸内細菌叢(腸内フローラ)は変化をすることが知られています。
原因としては、食事内容の変化、ストレスや抗菌薬の服用、食中毒菌などの
外部からの感染に便秘など色々考えられます。
いずれにしても、1,000種類、100兆個の腸内細菌の重さは1〜1,5kgもあり、
重量だけを比べれば「脳」と同じくらいあります。
※腸の事を「第二の脳」とよく呼ぶのですが、これは腸は脳に次いで神経ネットワーク
が発達していて、ストレス等に敏感に反応するためです。
最近の研究では、腸内フローラが腸内の神経細胞を刺激するような物質を多く作り、
この刺激が脳に伝わって宿主の感情や性格・ストレス耐性にまで影響を与えていることが
分かってきました。
重さの事に話を戻しますと、日本人の健康な人の平均的な排便の重さは約150〜300g/一日
と言われていますが、この内の1/3近くが腸内細菌やその死骸だという事です。
という事は、50〜100gの腸内細菌が毎日(便秘の人は違いますネ、ごめんなさい)便と一緒に
排出されている訳ですので、単純計算でも10〜30日くらいで全て入れ替わるという事になります。
最近「善玉菌/日和見菌/悪玉菌の割合が2対7対1位がベスト!」などと言われていますが、
10〜30日で全て入れ替えという事になると、10〜20%程度の変化なら2〜3日焼肉を食べまくったとか
食中毒を起こして3日間寝込んだくらいでもバランスを崩してしまうかも知れません。
腸内フローラというのは案外デリケートで不安定な(弱い)細菌の集まりなのです。
もちろん別の見方をすれば、私たちが自分に合った(自分の腸内フローラに合った)方法で
腸の細菌を育ててやれば、健康が大きく破綻することも少なくなる可能性があるのです。
ヒトの腸内細菌叢は一生のうちに変化をしていきます。
胎児から離乳食を食べ始めるまでの間の短期間での劇的ともいえる変化や、小児期から青年、
壮年を経て老年期に至るまでのゆっくりとした変化がそれになるといえるでしょう。
また、病気や薬品の使用などによっても変化の見られることがあるといいます。
例え一卵性双生児であっても、同じではないといわれる腸内細菌叢は、
宿主である本人の生活環境や習慣によって多様な変化を繰り返し、肉体的な健康だけでなく、
精神的な部分や性格、ストレス耐性にまで影響をもたらすといいます。
年齢的な変化も、ある程度は受け入れなければならないでしょうが、
食事や生活習慣などで変えられるものなら、変える事も出来るのではないでしょうか?
その為にも、より多くの知識を学び、出来そうなことからでも始めていく事が重要だと考えます。
ヒトの体の中、厳密にいうと細胞の中(内環境)は細菌やウイルスは入ないのが普通(健康)な状態です。
もし、細胞(体組織)の中に細菌やウイルスが入っていたら、それは紛れもなく病気という状態になってしまうからです。
よって母体内も当然無菌なので、その無菌の環境で育った胎児も無菌の状態に保たれています。
その為、胎児の腸内も細菌等が入り込めませんので、無菌なのです。
つまりは、常在菌(体内や体表面に常に棲みついている菌)といえども、ヒトが生まれた後で腸内や皮膚・気管などに
取り付くので、生まれた後の環境がその後の常在菌のバランスに影響を与えると考えられます。
※常在菌のことだけ考えると子宮の中での胎児は、母親の体組織(臓器)の一部という事になるのでしょうか?
生後数日で、ビフィドバクテリウム(ビフィズス菌)が現れるまでは、エンテロコッカス(乳酸球菌)、
エスケリキアコリー(大腸菌)、ラクトバチルス(乳酸桿菌)、スタフィロコッカス(ブドウ球菌)、ストレプトコッカス(レンサ球菌)
などが一時的に現れては減少すると言う状態が短期間存在します。
最終的には(乳幼児の間は)ビフィズス菌が優勢菌となるのですが、この時期の「母乳栄養児」と
「人工栄養児」とでは腸内細菌叢(腸内フローラ)の内容(細菌の種類や構成)に差があると言われています。
母乳栄養児では、腸内細菌の構成はビフィズス菌がそのほとんどであるのに対し、人工栄養児ではビフィズス菌の割合が
母乳栄養児に比べ明らかに少ないのです。
代わりに、バクテロイデスや、ユウバクテリウムなどの離乳期以降や成人期に出現する菌が目立っているといわれています。
※少し強引な言い方をすれば「母乳栄養児より人工栄養児の方が腸内細菌は老化が早い!」と言う事でしょうか?
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ビフィズス菌
エンテロコッカス
大腸菌
ラクトバチルス
ブドウ球菌
レンサ球菌
バクテロイデス
ユウバクテリウム
離乳期以降〜(成人期)〜壮年期前までは腸内細菌叢の菌の種類や構成などの特徴は、
基本的にはほぼ同じといわれています。
離乳してから、食事内容は大人と同じになるからと言われています。
やはり食事の内容によって、腸内細菌の質も変化が出て来るという事なのでしょう。
乳児期に比べ、ビフィズス菌に多少の減少が見られてきますが、
他の日和見菌や悪玉菌などが一斉に増加して来るために全体の構成から見ると、
ビフィズス菌をはじめとする乳酸菌など善玉菌の割合が減ってきてしまいます。
代わりにバクテロイデスやユウバクテリウムなどの日和見菌と呼ばれる菌種が出現後あっという間に増加して
全体の70%前後になる一方で、大腸菌や腸球菌などは乳幼児期よりは減少したのち(健康であれば)数量的には
そのまま安定した状態が続くようです。
また、クロストロジウム(ウェルシュ菌)などの悪玉菌の仲間も離乳期以降出現し始めて
その後の食生活や生活習慣如何で増減してきます。
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ウェルシュ菌
壮年期〜老年期にかけ加齢と共にビフィズス菌などの善玉菌が増々減少して、
代わりにウェルシュ菌などの悪玉菌が増加しだします。
また、大腸菌や腸球菌、乳酸桿菌も次第に増加する傾向があることも知られていますが、
この変化は宿主の老化に伴う腸内細菌叢の老化と考えられています。
この時期の人の極端な例では、乳児期にあれだけあったビフィズス菌が全く見られない
という事も過去の事例ではあったようです。
やはり、宿主が齢をとっていくのに合わせて腸内細菌も齢をとっていくのでしょうか?
もしかしたら腸内細菌達が齢をとるから宿主も齢をとるのでしょうか?
※上記の中で、母乳栄養と人工栄養の違いや、壮年期から老年期に至る部分に関しての腸内細菌叢の
構成の変化は、親や本人の努力次第で良好な方向へ変えられるのではないでしょうか?
と、思いたいのですネ。
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乳酸菌レポート