短鎖脂肪酸


脂肪酸(Fatty acid)

鎖の様に炭素が繋がっているカルボン酸(有機酸)の事で、一般には炭素数が6個までのものが「短鎖脂肪酸」12個以上のものが 「長鎖脂肪酸」その間のものを「中鎖脂肪酸」と呼びます。


オレイン酸、リノール酸、ドコサヘキサエン酸、フタル酸、リンゴ酸、クエン酸、アミノ酸などが脂肪酸でよく聞く名前です。



短鎖脂肪酸(Short-chain fatty acid)

酢酸プロピオン酸イソ酪酸酪酸イソ吉草酸吉草酸カブロン酸乳酸コハク酸ギ酸などがあり、 ほとんどが腸内に存在しています。


ヒトの場合これらは、主に大腸で腸内細菌が食物繊維や オリゴ糖を発酵して産生しています。


つまり食物繊維を多く摂ることで、これらを産生する腸内細菌の活動が活発化して、 その結果として多量の短鎖脂肪酸が作られ抗炎症、抗アレルギーの他、大腸での上皮細胞の増殖、粘液の分泌や、 肝臓、腎臓、筋肉ではエネルギー源に利用し、また生体調節機能も果たしているのです。


また、有機酸である為、弱酸性なので結果として腸内環境も弱酸性になるので、酸に弱い傾向にある大腸菌、 赤痢菌、サルモネラ菌などの有害菌の増殖を抑制するだけでなく、その酸は大腸を刺激して蠕動運動を促進することにより整腸作用を促したり、 カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分も水溶性に変化させて、体内に吸収し易くなるという働きも期待できます。


個々の短鎖脂肪酸のヒトの体内での主な働きとしては、


カルシウムなどの吸収を促進する。
    酢酸プロピオン酸


腸内を酸性にする働きが強い。
    酢酸酪酸プロピオン酸乳酸


エネルギー源になり易い。
    酪酸


グリコーゲンの貯蔵を促す。
    酢酸


コレステロールの合成を抑制する。
    酪酸プロピオン酸


ガン細胞の抑制に期待、免疫細胞(制御性T細胞など)を 増やす効果が期待される。
    酪酸


ニトロソ化合物やアンモニアなどの有害物質を抑制する。
    乳酸


などがあります。



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酢酸
プロピオン酸
イソ酪酸
酪酸
吉草酸とイソ吉草酸
カブロン酸とギ酸
乳酸
コハク酸
腸内細菌
オリゴ糖
大腸菌
免疫
T細胞



有機酸とは?


有機酸(Organic acid)

ここでいう有機酸の有機とは炭素があるという意味です。
それでは無機酸というのは炭素がないのかというと、一部の例外はありますが、炭素は基本的にありません。


話を戻しますが、炭素が含まれている化合物の中で酸(酸性)になっているものを「有機酸」と呼ぶのです。
ほとんどの有機酸は「カルボキシル基」という構造を持っている為に「カルボン酸」とも呼ばれています。


基本的に有機酸は、弱酸性で水中ではほとんど解離しません。
ただ、分子量の少ない有機酸は水に溶けるものがあります。




※「カルボキシル基」とは
炭素原子1個に酸素原子1個とヒドロキシル基(酸素原子1個と水素原子1個)1つが二重結合している親水性(水と結びつきやすい、溶けやすい) の官能基(なになに基というのは簡単に言い換えると原子の集合体で良いと思います)です。
化学式だと「―C(=O)OH」の他に「?COOH」「−CO2H」などと書かれます。


構造式では、
画像


と、書きます。


中央の炭素Cと上の酸素Oは二重結合。
右側の酸素Oと水素H、同じくその酸素Oと中央の炭素Cは共有結合。
左のRは原子の集合体である一価の官能基(個々の部分にいろいろな原子の集まりがくっついてきて、それぞれの物質になります)で、 ここでは一価といって、他の原子とつなげる手である不対電子を1個持っています。


最近では「カルボキシ基」と呼ぶ方が正しいようです。




※「ヒドロキシル基」とは
「H2O(水)」から水素原子が1個解離して「HO」になったもので、特徴として弱酸性、1個の不対電子を持っています。


最近では「ヒドロキシ基」と呼ぶ方が正しいようですが……。
重ねがさねすいません(-_-;)




※「不対電子」「共有結合」「二重結合」とは
原子の構造で、最外殻の電子が全て2個づつの「電子対」という状態の「対(つい)」になっていれば、それは「希ガス」といって、 ほかの物質とはほとんど反応しない安定した物質になります。
元素周期表でいうと、一番右に載っている第18族の原子の「He ヘリウム」「Ne ネオン」「Ar アルゴン」などがこれになります。


しかし、希ガス以外の原子、ここでは「H 水素」「O 酸素」や「C 炭素」などは対になっていない 単独の「不対電子」という電子を1個以上持っているので、周りにある物質と反応しやすくなっています。
つまり、不対電子が周りの物質の電子と対になって、なんとか電子対になろうとするわけなのです。


この隣の原子と自分の余った不対電子を互いに共有して電子対にした状態を「共有結合」と呼びます。
上記の拙いカルボキシ基の構造式でいうと「OH」の部分です。
酸素Oは2個、水素Hは1個の不対電子があるので、互いに1個づつの電子を出し合って共有結合しています。
ちなみに、酸素の余ったもう1個の電子は炭素Cと共有結合しているわけです。


一方、互いの余っている2個づつの不対電子を出し合って2組の電子対をつくることを「二重結合」と呼び、 上記の図では、中心の炭素Cとその上の酸素Oがその状態で、二重線で表しています。


詳しくは、高校の化学の授業を(まだ思い出せるようでしたら(^_^;))思い出してみてください。