憩室症


憩室症

憩室症



病気の概要・症状


腸管内壁の一部が、腸管内圧の上昇などが原因で袋状に膨らんでしまう病気です。


腸管外側(例えば腹部を開いて患部の腸の外側をという事です)から見た感じでは 飛び出している膨らみが(内側から見れば凹み=憩室)出た状態が、腸の表面に、 不謹慎ながらジェリービーンズ(大きさはともかく)が張り付いている様な感じに見えます。


小腸では十二指腸部が最も多く、大腸では右側の上行結腸が日本人には多かったのですが、 近年は、食習慣など生活様式の欧米化の影響で、 左側の下行結腸やその先のS状結腸に発症例が増加してきて発症の面でも欧米化しているといわれています。


腸壁全層が飛び出している真性(先天性)憩室と、腸の粘膜だけが筋肉の層の隙間から出て来る仮性(後天性)憩室に分類できますが、 大腸に発症するものは大部分後者だと言われています。


十二指腸憩室の場合は症状と呼べるものは余り無く、他の検査の時に偶然発見されたりもするようです。
治療もする必要ない場合が多いようですが、 レンメル症候群と言って胆管を圧迫して胆石症とよく似た症状が出て来る時もあるので注意は必要です。


大腸憩室症の場合も、ほとんど症状が無いので他の検査の時に見つかることが多いようですが、 下痢・軟便・便秘等の便通異常や膨満感・腹痛等、過敏性腸症候群に似た症状が発症することもあり、 こちらも注意は必要です。


ただ、憩室内に便などが溜まって炎症が起こる合併症が数%〜10%前後の確率で起こる可能性が指摘されています。
憩室出血・憩室炎等、強い腹痛・下痢・発熱や血便を伴い、 進行すれば穿孔(穴が開きます)や穿孔性腹膜炎・腸閉塞・周辺臓器との瘻孔形成(小さな孔が通ります) など重篤な症状に発展する事もあります。



原因


腸管が腸管内の圧力に負けて外側に飛び出してしまうという病気です。例えれば、ゴム風船を膨らませる時に、 風船の表面に一部弱いところがあればまずそこから膨らんでいく時の状態とでもいえば判るでしようか?


いずれにしても原因としての第一に挙げられるのは腸管の脆弱化です。これは加齢によるところがおおいとされ、 40歳代から見つかるようになり90歳以上では、ほぼ全員に多数の憩室が見られると言います。


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第二の原因としては腸管内の圧力が上昇している事でしょう。食生活の欧米化で、肉食が増加し繊維質の摂取が減少して、 便秘や腸管の攣縮(れんしゅく=この場合は腸が痙攣の様に細かく収縮する)が起きやすくなり結果として腸管の内圧が上昇して、 風船(腸)をより大きく膨らませてしまうのです。


また、人種・遺伝・体質や生活環境による発症も報告があるようですし、 憩室のある人が抗血栓薬や抗凝固薬などの血液を固まりにくくする薬を服用していると、 憩室内から出血することもあるようですから、高齢の方でこの薬を服用していたら、 血便があるかどうかだけでもたまにチェックしてみて下さい。



治療・予防


基本的には、無症状ならば治療せずに放置しておくようですが、軽くても症状が出た場合は投薬などの治療が必要です。
また、大腸憩室から出血している場合は大腸内視鏡での止血処置を、 出血が多い場合や穿孔・腹膜炎・腸閉塞を併発したりしているときは外科的治療(手術)が必要になります。
いずれにしても、40歳を過ぎたら一度大腸内視鏡検査などで、自分の腸の具合を確認しておくと良いかも知れませんネ。
憩室が有ると解っていれば、腹痛や便通異常などの症状が出た時に対応がその分早く出来ると思います。


もちろん、40歳の記念行事に大腸内視鏡検査をして異常がなかったからといっても油断はできません。


齢をとればとるほど増加して来る病気なので、予防は必要です。ただ、原因にもよりますが、 憩室の発症を完全に予防することは出来ないようですが(原因が「年齢」では完全に予防するのは現代科学や医学でも 困難極まりないですから)、それでもここでは特に最近増加している大腸憩室症に予防の効果が在りそうで、 簡単に出来そうなものをいくつか挙げて病気に対して悪あがきをしてみたいと思います。


まずは、食物繊維を多く摂ることです。水溶性でも、不溶性でも食物繊維なら何でもOKです。
野菜・果物・全粒穀物等を意識して多く摂り、それに加えて水分も十分に摂りましょう。こうして、 大腸の内容物が増えれば腸の痙攣も減少して、腸内圧力も低下していきます。


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その上、水分を吸収した食物繊維は便の量を増やし柔らかくしてくれますし、腸内での移動速度も速くしてくれます。
これで、タイミングよく排便すれば完璧です。
トイレを我慢すると、せっかくの水分が便から奪われて、便が硬くなってしまい排便時に余計な圧力が掛かってしまうかもしれません。


また、食事に気を配るついでと言っては何ですが、プレバイオティクスである食物繊維を摂るのと同時に プロバイオティクスである乳酸菌の入った乳製品やサプリメントを摂れば予防には十分だと思います。
便の量を増やし、排便時の圧力を余り上げないようにするのは大抵の乳酸菌が守備範囲ですが、特に ラクトバチルス属ビフィドバクテリウム属 の乳酸菌の配合されている物はお勧めです。


最後に、大腸憩室症の人は大腸ポリープや大腸ガンになる確率が高いと聞きますが、 大腸憩室がそのままガン化することは無いとも言います。
どちらかと言うと、これらの病気は食物繊維不足が原因の一つなので、 共通した食生活がこれらの病気を同一の人が発症してしまう土壌ではないかというのが現在の大方の意見のようです。


いずれにしても、食物繊維を多く摂るのは良い事だと思います。野菜・果物・豆類や出来れば玄米などの全粒穀物を摂り、 その上可能なら肉類を現在より少し減らしてみて下さい。但し、食物繊維は水分を十分に摂らないと、 便秘の原因になるのでいつもより多めの食物繊維を摂ったら、いつもより多く水分も摂りましょう。



ビフィドバクテリウム属(ビフィズス菌)は、整腸作用の他にコレステロール対策や免疫機能の向上に効果が期待されています。
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ラクトバチルス属は、整腸作用の他にピロリ菌抑制効果があるとされ、胃にも良い乳酸菌です。
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