細菌以外の生物


細胞として見た生物の分類

細菌は私たちと同じ生物ですが、普段から目にすることが無いので(小さくて見えないですからネ) 食中毒のニュースなどが世間を騒がせているときくらいしか気にすることもないと思います。

でも意外と私たちの近くに居ますし、最近では「……の上は雑菌だらけ!」などというコマーシャルも 見る事が多くなったので、少しは身近に感じてきている人もいるかも知れません。

そんな「細菌」というものを、少し掘り下げてここでは説明いたします。
学校の生物の授業を思い出しながら、楽な気分でこのページを読んでいただければ私もうれしいですし、 細菌達も喜ぶかも(?)知れません。



ご挨拶もほどほどに早速ですが、世界中の全ての生物は大きく分けると下の三つに分類出来てしまいます。

「古細菌(アーキア)」→広義ではこれも下の原核生物に含まれます。
「原核生物(バクテリア)」→これが細菌(真正細菌)と呼ばれます。
「真核生物」→通常、人の目に触れる(普通に見ることが出来る)生物です。


この内、上の二つの古細菌と原核生物はよほど生物に詳しい人でない限り、説明を聞いても 区別するのが難しいと言われているようです。
それくらい同じようなものと言う事でしょうか、ちなみに下でも少し書きますが、ウイルスは 生物としての基準をすべて満たしていないと言う事で、上の「生物」には入りません。 



※ウイルス(virus)

よく病気の原因になったりするので怖いと感じる人も多いのではないでしょうか?
「インフルエンザウイルス」とかは小さな子供でも名前くらいは知っていますし、最近よく聞く「何とか熱」 などと名前だけで気味悪いと感じてしまうような感染すると治療法も確立されていないような熱病もウイルスが原因 のものが多いですよネ。

そのウイルスというのは、基本的に細菌(細胞)より遥に小さいものなのです。
なぜかと言えば、たんぱく質の殻とその中に入っている核酸(遺伝子であるDNAかRNA)だけという構成なので 物凄く小型になっています。

しかも生命の最小単位である細胞質を持った細胞という形態を持っていないので通常「生物」とは見做されない ことが多いのです。
が、他の生物の細胞内で「自己複製(増殖)」が出来るため生物に近い振る舞いが出来る存在なので、 今のところ生物に近い別の何かという事になっています。

私たち生物の細胞の中で、生物だけど生物じゃないものがどんどん増殖していくなんて、何だか増々気味悪くなってきましたネ。




古細菌(アーキア/archaea)

古細菌と言っても、古い細菌という意味ではありません。
確かに古くから地球上に存在していたと言われる「タイプ」の細菌ですが、以前は細菌の中に分類されていましたが、 つい最近RNA等が調べられるようになり、細菌(真正細菌)とは全く別だと言う事になり「古細菌」という分類になりました。
※古くから存在していた「タイプ」の細菌に似ているという事でしょうか。


これら古細菌は、普通の生物がとてもじゃないが生きていけない塩分や熱泉の中などの極限的な環境に生息していたり、 他の生物には毒素になるメタンを作ったりということで知られています。
つまり、火山のすぐ近くの有毒ガスと100℃以上の熱水が噴出しているその中で発見されたりしていると、科学番組の ネタにされているアレが古細菌というものなのです。


もちろん他の生物(真正細菌や真核生物)との違いは、生存環境だけではありません。
細胞膜のツクリが違うのです。
私たちヒトも含めて真核生物から真正細菌はグリセロール3リン酸という物質から細胞膜が 構成されているのに対して、古細菌はグリセロール1リン酸から出来ているという違いがあります。

この違いはヒトで言えば、髪の色や皮膚の色が違うというレベルではなく、髪の毛の代わりに鳥の羽毛が生えてるとか、 皮膚が鱗になってる程の違いなのです。もはやここまで違うとヒトではありませんよネ。
この様に古細菌は細菌と同じ原核生物(細胞内に核の無い単細胞生物)なのですが、進化的にはかなり疎遠な、というより 別々の生物なのです。

※別称「始原菌」「後生細菌」
また、古細菌は真正細菌と異なり病原性を持つものがほとんど発見されていないおとなしい生き物です。(今のところは……)




真核生物(eukaryota)

動物、植物、菌類、原生生物が含まれます。
普通、私たちが生き物として認識するときに思い浮かぶのが、私たちヒト自身も含めた真核生物でしょう。


幼稚園などで、先生が子供たちに生き物の名前を聞くと「いぬ」とか「さかな」とか「おはな」と答えるはずです。
ここでもし「メタン菌」とか「エスケリキアコリー(大腸菌の事です)」などと答える子がいたら、先生は白い眼で 見るでしょうし、他の子たちからはいじめられるか、良くても仲間外れにされるかも知れません。
答えは間違っていないのにです。

スミマセン横道にそれました。でも、それくらい私たちの日常で真核生物以外は、生き物として一般的ではないのかも知れませんネ。


そういう真核生物の特徴としては、大体の真核生物は人の目で見る事が出来るというところでしょう。
もちろん菌類や原生生物の中には顕微鏡サイズのものも多いのですが、一つ一つの細胞が大きく、多細胞生物にもなり易いので、 古細菌や真正細菌よりも見やすく(大体の真核生物の細胞は低倍率の顕微鏡で見えます)その分、親しみやすいと思います。


その大きな細胞の中には「小胞体」「ゴルジ体」「ミトコンドリア」といった生物の授業でおなじみの細胞質があり、 また植物などの細胞には葉緑体も含まれていますが、古細菌や真正細菌との最も解かりやすい違いは、遺伝子の入った 「核」があるという事でしょう。

この「核」の有無によって、古細菌や真正細菌の原核生物(遺伝子が細胞質の中に散らばっている)と真核生物(遺伝子が 核の中に納まっている)とに分けられてもいます。




細菌(真正細菌/bacteria/bacterium)


細菌とは?

画像


※細菌(真正細菌)≧原核生物

細菌(Bacterium)は単純な構造ですが他の生物(古細菌や真核生物)に比べ種類、数共に圧倒的に膨大であり未だに 数パーセント程度が発見されているにとどまっていると考えられています。


細菌は、原核生物(古細菌もここは同じです)なので細胞内に「核」が無く遺伝子核酸(DNA遺伝子の事です) は細胞質の中にそのまま存在する単細胞生物であり、形状は球菌(球形)か桿菌(棒状)が多くみられますが、 球菌が連なって双球(二つ繋がった)状や連鎖(三つ以上が繋がった)状になったり桿菌が糸状に連なったり、 中には「群体」を形成するものまで存在します。


増殖は環境が良ければ短時間で進むものが多く、「出芽」「芽胞」などを作るものもありますが、 形態としては「分裂」が一番多くみられるようです。


※「分裂」とは、一つが二つになることですが、細菌の場合どちらが生んだ生まれたというものでは無く、 単純に一人の自分が二人になった状態なので、当然親子の区別が在りません。
何が言いたいのかというと、細菌には私たちの様な寿命というものが無いという事が言いたいのです。
ある意味うらやましいかもですネ。(細菌が永遠に生きられるという意味とは少し違いますヨ)




細菌の研究の現状

細菌に関していえば現在発見されている物は細菌と言う生物種の5〜10%程度が見つかっているだけで あると言われています(1%未満と言う説もあるようです)。
とにかく小さいし、自分の家の食卓の上から深海の底や南極の氷の中まで生息していますから、 採取して来るだけでも一苦労なのです。


また、発見・採取しても、例えば空気に触れるとあっという間に死滅してしまったり(偏性嫌気性菌と言います)、 他の菌種と分離出来なかったり(無理に引き離せない、見分けがつかない)、それでもやっとシャーレやフラスコに移せても 育て方がわからない(培養の技術がまだ確立されていない)為、結局増殖(培養)失敗に終わったりしているのが現状のようです。


この様な菌種を、微生物学では「VNC(培養不能菌)」と言うようで、かなりの数があると言います。
つまりこの研究は古くからあるようですが、対象が余りにも巨大なため、まだまだ端緒に就いたばかりと言えるでしょう。
※厳密には「VNC」と「培養不能菌」は別々に区別しているようです。




共生関係

「常在菌」と言って健康なヒトの身体(腸管内、口鼻腔、皮膚、生殖器等) には多様な細菌が住み着いていて「共生」の状態にあります。

但し、常在菌が共生しているのはヒトの細胞の外環境(外側)だけで、細胞や組織の中には 自己以外の細胞(細菌)は存在しません。
つまり、ヒトの(他の動植物も基本的には同じと考えてよいと思います)体内(ここでは細胞の中)は 無菌状態ですが、もし自己以外の異物(細菌やウイルス)が体内(細胞や組織)に侵入してくると、 病気という状態になるのです。



この常在菌は腸内だけで約100兆個と言われ、この数だけで人体の総細胞数である約37兆個の倍以上になります。
数年前まで人体の総細胞数は60〜70兆個といわれていましたが、ここにきて正確に数えられるようになったという事の様で、 このページでも訂正いたします。


※ちなみに皮膚の上には約1兆個がいると言われています。そんなに居るとは思えませんが……。
もっとも腸内にしても皮膚にしても常在菌は細菌(原核生物)なので、真核生物であるヒトの細胞よりはずっと小さいので 数はともかく容積は比べ物にならない訳です。安心!



つまりヒトは自己という多細胞の真核生物に多数の細菌という原核生物が棲みついて成り立っている、 細胞の集合体の様な存在なのです。
ヒトの体は、彼ら細菌達が自己の領分を侵さない限り住処を提供し、その代わりに一部の細菌達は ヒトの健康維持に貢献しています。
この状態をみて、ヒトと細菌は「共生関係」にあるといって良いと思います。


生命を維持するという事、つまり「生命活動」とは体を構成しているヒトの細胞と、 常在菌と呼ばれる細菌たちが各々関係を持ちながら微妙なバランスをとって、 宿主である人間の健康を維持し続ける事なのだというのが現代の細胞や細菌から見た生命という物の 基本的な考え方のひとつになっているようです。



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