大腸菌(Escherichia coli)エスケリキア属コリー
グラム陰性桿菌
通性嫌気性菌
大腸菌はそのほとんどがヒトにとっては無害かそれに近いものなのですが、
一部の「病原性大腸菌」と呼ばれている菌はヒトにとって有害性を持つと言われています。
現在、病原性大腸菌(下痢原性大腸菌)には以下の5種類が分類されています。
分類(OH血清型分類法)
大腸菌は細胞の抗原性の違いを、血清型別によって分類されています。
これによりO抗原とH抗原が主に用いられて、これらの組み合わせで血清型が決まっています。
O抗原とは、グラム陰性菌の細胞壁外膜に含まれる脂質(脂肪酸)と多糖が共有結合した糖鎖構造体で
リポ多糖(「リポポリサッカリド 」lipopolysaccharide)と言われる複合体で、
グラム陰性菌のものは強い抗原性を示す為こう呼ばれています。
また、グラム陰性菌の鞭毛がもつ抗原性で分けるのをH抗原型別と呼び両方の組み合わせで
大腸菌の分類をしています。(血液型の分類でもO抗原、H抗原を使われています)
それにより、例えば「O157H7」と言うように呼ばれているのです。
現在「O抗原」は1番〜180番くらいまで160〜170種類程、「H抗原」は1番〜50番くらいまで40〜50種類ほど
が発見されていますが、番号と種類数が合わないのは途中で欠番が在ったりする為です。
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大腸菌
リポ多糖
腸管病原性大腸菌(病原血清型大腸菌)EPEC
(Enteropathogenic Escherichia coli)
O血清型O20、O114、O159など
潜伏期間12時間〜3日程
この菌は小腸に入ると組織に密着しながら破壊してゆき、大量の水に近い(または粘液状の)
下痢を発症させ脱水症状を引き起こします。
また腹痛、嘔吐、発熱、倦怠感などの症状も見られますが成人なら1〜3日程で回復するようです。
ただ乳幼児が重い脱水症状を起こすと重篤な症状になることもあり注意が必要です。
腸管侵入性大腸菌(組織侵入型大腸菌)EIEC
(Enteroinvsive Escherichia coli)
O血清型O6、O112、O164など
潜伏期間1〜5日程
腸管(主に大腸)の粘膜組織(上皮細胞)に侵入し増殖しながら、周囲の細胞に広がっていき潰瘍性の炎症を引き起こします。
症状としては粘液または血液や膿の混じった下痢が起き、吐き気、嘔吐、発熱、寒気、頭痛を伴う事もあり、
まれには痙攣を越すこともあるといわれています。
ただ、大規模な集団感染は余り無く、乳幼児などの感染も少ないようで大抵は2〜3日程で症状は治まっていくようです。
腸管毒素原性大腸菌(毒素原性大腸菌)ETEC
(Enterotoxigenic Escherichia coli)
O血清型O8、O85、O169など
潜伏期間72時間程
大規模な食中毒や上下水道などのインフラが整備されていない国からの帰国者が感染していることの多い病原性大腸菌で、
腸管内で下痢症状の毒素を産生することからこの名前が付いています。
発熱は少ないようですが、腹痛、嘔吐があり、水の様な下痢で脱水症状を起こしやすくなるので回復が長引くようなら注意が必要ですが、
大抵は1〜3日程で回復に向かうといわれています。
腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)EHECまたはVTEC
(Enterohemorrhagic Escherichia coli)
O血清型O111、O121、O157など
潜伏期間3〜5日以上
腸管内(主に大腸)に接着し「ベロ毒素」と言う毒素を産生していく菌で、
近年になっても国内で大規模な集団発症事例が後を絶たない状況です。
O111、O121、O157など毎年のようにニュースにもなり感染者の数だけでなく、
その重篤な症状でも注目を集めているのでご存知の方も多いことでしょう。
主な症状は、水の様な下痢、血便、腹痛で7〜10日程で回復するのが普通ですが、小児や高齢者は「溶血性尿毒症症候群(HUS)」
などの腎臓障害を起こし重症化することがあり細心の注意が必要です。
腸管集合性大腸菌(腸管凝集接着性大腸菌)EAggEC
(Enteroaggregative Escherichia coli)
O血清型O15、O78、O128など
潜伏期間6〜24時間程
ヒトの細胞(腸管)だけでなく物(手で触れた物とか)にまで接着(凝集接着)するという特徴を持った菌です。
発熱、腹痛、吐き気と水の様な下痢がある場合が多く、血便になる場合もあるようです。
その上、回復には時間が掛かり成人で3〜7日程、免疫力が低下している乳幼児や高齢者は下痢が10日以上継続することもあるようです。