ブドウ球菌


ブドウ球菌

「ブドウ球菌」(Staphyloccus)スタフィロコッカス属


グラム陽性
球菌
通性嫌気性


※外見が果物のブドウの房の様に見えることから「ブドウ球菌」の名前が付いたといわれています。


私たちヒトの周囲の環境にいるブドウ球菌の仲間は、現在15種類ほどが分離されていますが、 実際にヒトに対して病原性をもつものは主に「黄色ブドウ球菌」「表皮ブドウ球菌」「腐性ブドウ球菌」 等があります。


中でも、血漿(血液から赤血球や白血球などを取り除いたもの)凝固作用を持つ「コアグラーゼ」 というタンパク質を産生する黄色ブドウ球菌は化膿性疾患の原因菌として、また食中毒を起こす菌としても知られています。


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その一方でブドウ球菌の仲間は、ヒトの体に普通にみられる常在菌ですから、鼻腔内、皮膚表面、消化管内では他の細菌とともに、 「常在細菌叢」という一種のバリアーを形成して、外部からの病原菌や異物が体内へ侵入するのを防ぐ役割も持っているといわれています。


現に、前述した「黄色ブドウ球菌」「表皮ブドウ球菌」「腐性ブドウ球菌」の三種類以外は、 ほとんどヒトに対しての病原性を持たないとされています。


また、人体以外でも食物や埃の中でも見つかっています。
食物なら食中毒の原因菌として、ケガをして傷口を消毒しなければ化膿の原因菌として、 他にも、おでき、ニキビ、水虫等の中にまで存在していますから、とても身近な菌とも言えるでしょう。


特に、食中毒の時は食物の中でブドウ球菌自身が増殖するときに「エンテロトキシン」という毒素を産生しますから、 細心の注意が必要です。


この場合、食物についたブドウ球菌自体は通常の調理の加熱でほぼ死滅しますが、 食中毒の原因であるこの「エンテロトキシン」という毒素は100℃で30分の加熱でも分解されずに残ってしまうので、 加熱調理をするのならば、食材を出来るだけ早いうちに調理してしまうのが良い方法です。
もちろん生で食べる時は、加熱していませんからしっかり水洗いして新鮮なうちに食べてしまうのが良いでしょう。


他にも、ブドウ球菌は穀物やその加工品での感染症例が特に多いことは知られていますが、 それ以外の食品では増殖しにくいというわけではありません。


きちんと衛生管理をしている仕出し弁当からでも、ちゃんと火を通したはずの菓子類からでも感染例が報告されていますから、 食品の種類に限らず気をつけることもが重要です。


それでも感染した時ですが、
食中毒の場合の潜伏期間は1〜6時間(平均3時間程)で腹痛、吐き気、嘔吐があり下痢になることもありますが、 健康で体力があるなら、それ以上は重症化しないようです。
また1〜2日で回復しだして、後には残ることもないようです。


もちろん体力の弱い、乳幼児やお年寄りはその限りではありませんので、早めの適切な治療が望まれます。


黄色ブドウ球菌は「コアグラーゼ」の他にも「毒素性ショック症候群毒素」「溶血毒素」「白血毒素」 など多様な毒性を持つ代謝物を産生しますが、 近年では感染の治療薬である抗生物質を無効にしてしまう物質まで作り出し「院内感染」と言う言葉も良く聞くようになってしまいました。


MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
VRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)などがニュースでよく聞く名前です。