リポ多糖


リポ多糖(リポポリサッカライド  LPS)

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リポポリサッカライド(Lipopolysaccharide : LPS、リポ多糖、リポポリサッカリド、内毒素、エンドトキシン)は、 糖脂質ともいって多糖と脂質から構成されていて、グラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分でもあります。


つまりリポ多糖とはグラム陰性菌の細胞壁の一番外側に存在しています。
いってみれば細菌の部品の一つみたいなものと考えていただければ良いかと思います。


※グラム反応は感染症などで病院に行くと、細菌に感染しているかを確かめる時などに使いますから 名前くらいなら知っている方も居るかも知れません。
グラム反応とは、細菌をグラム陽性菌と陰性菌に分けるという代表的な分類方法の一つです。


基本的には細菌の細胞壁の脂質二重膜の外側の層(細菌の一番外側の膜です)に入り込んでいる脂質の部分と その上に突き出るように結合している(当然細菌の細胞壁からも付きだしています)糖鎖の部分から出来ています。
※上にある「リポ多糖簡易構造図」を参照してください。


このグラム陰性菌の細胞から突き出したかたちの糖鎖の部分はコア多糖(またはコアオリゴ糖)と呼ばれる部分の上に 「O側鎖多糖」と呼ばれる部分が乗っかっている様な形で構成され、このO側鎖多糖は「O抗原」と呼ばれ細菌ごとに異なる構造をとり、 細菌の分類などの鑑別材料になっています。


例えば大腸菌のO抗原は現在160〜170種類ほどが発見されていて、157番目に発見されたO157はニュースなどでも取り上げられています。


※大腸菌はO抗原だけではなくH抗原もあり「病原性大腸菌O157H7」などと呼ばれます。
大腸菌について詳しくは、大腸菌病原性大腸菌のページへどうぞ。


リポ多糖(LPS)は通常では細菌の細胞壁から外れることは殆んどないのですが、 細菌が死んだときは細胞壁も破壊・溶解するので 細菌からは外れてしまいそこで毒性を発揮してしまうと言われています。


細菌の毒素とは細菌自身が生きている状態で産生・分泌していくものですが リポ多糖の場合は細菌が自分の内側に持っていて死んでから出て来る毒素という事になり、 前者を外毒素、後者(リポ多糖等の事)を内毒素と呼びます。


リポ多糖は様々な炎症性サイトカインの産生促進作用を持つため抗原提示細胞である樹状細胞マクロファージを刺激することによって免疫系全体を活性化する作用があるものの、 それが過剰になった場合は「エンドトキシンショック」というショック状態に陥る事例もあります。


ただし自然な経口・経皮摂取では毒性よりも免疫機能の活性化や発達に寄与していると言われていて、 乳幼児期のリポ多糖の自然摂取でその後のアレルギー体質になる事を抑制しているという報告もあります。


※グラム陰性菌はヒトの腸内細菌である日和見菌の中にも見られ、 確かに病原性も持ってはいますがそれ以上に抗原として免疫活性化に良い影響があると言われています。
つまり、細菌の部品の一つなのですが、免疫細胞達にはこれが病原菌の「名札」であり「攻撃目標」になると言う訳です。


分かりやすくするために極端な言い方をすれば、自分の生活環境をあまり清潔にせずに、 子供のころから有害なグラム陰性菌やその部品であるリポ多糖を自然摂取するくらいの環境に置かれていれば、 免疫細胞達も自然に鍛えられて、アレルギーも抑制できるという健康な体になる事ができるのです。


「みなさん!免疫を鍛えて健康になるために、しばらく除菌をやめてみてはいかがでしょうか?」



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