抗体(免疫グロブリン「Ig」)
「抗体」とは細菌やウィルス等の抗原に結合するという性質から呼ばれるようになった名称で、
本来は「免疫グロブリン(Immunoglobulin=Ig)」と呼ばれます。
ヒトをはじめとする生体内では、外部から侵入してきた細菌やウイルス、花粉及び体内に発症したガン細胞などの異物を、
自分ではない「非自己」と判断し「抗原」と認識します。
「抗体」は、これら全ての異物を「抗原」認識して結合する働きを持つ糖タンパク分子で、
リンパ球のB細胞のみが産生することが出来るものです。
B細胞から放出された抗体は基本的には血液中などをその流れに乗って浮遊していますが、
産生されたばかりでB細胞表面に居る時は「抗原レセプター」といって「抗原」を認識する触角や、捕まえる手
として存在しています。
ヒトをはじめとした生体にとって、自分の体に侵入してきた自分以外のものすべては「非自己」であり、
それは即ち自分にとって害をなすものなのです。
例えば、病原性を持っているO157などの細菌やインフルエンザウイルス、
花粉症などのアレルギー反応を起こしかねない花粉などです。
これらの非自己である抗原を殺菌分解して排除しようとするのが「免疫反応」と呼ばれ、
この免疫反応に特化したものが免疫グロブリンまたは抗体というものなのです。
※食物は体の中に侵入していませんから「異物」であっても免疫反応は起きないのです。
「消化器官と免疫」のページにもう少し詳しく書いてあります。
ここからは上記の「抗体の基本構造図」を参照してください。
抗体の基本構造はアミノ酸という分子が沢山集まった「ポリペプチド鎖」で出来た「軽鎖」と「重鎖」が4本くっついてY字型をなしています。
そして、Y字の両腕の部分に「軽鎖」がひとつずつ、腕からY字の下の棒にかけての部分に「重鎖」が下では並行して、
腕の部分では分かれてそれぞれの「軽鎖」と並行しながら4本合わせて二重のY字型を形作っています。
図ではわかりずらいと思いますが、大きさも重鎖(分子量で50,000〜77,000程)の方が軽鎖(分子量25,000程)の倍ほどあります。
(長さで一応倍くらいにしました)
そしてY字型の両腕が分岐する部分を「ヒンジ領域(糖鎖部)」と呼び、両腕の部分を「可変領域(Fab領域)」下の部分を「定常領域(Fc領域)」と呼んでいます。
可変領域は異物を捕まえる場所で、特に先端の部分は多様な抗原に合わせてアミノ酸の配列に多様な変化が見られます。
言ってみれば沢山の鍵穴に合わせるために沢山の鍵を持っている様な物ですが、
一つの抗体は一種類の抗原に対する鍵しか持つことが出来ませんから、たとえ同じ種類の抗体でも可変領域先端の鍵は、
この世の中の細菌やウィルス等の抗原に合わせて物凄く種類があるという事になります。
が、しかし
それは樹状細胞やマクロファージの様な貪食細胞達が、
体内に侵入してきた異物である「抗原」を殺菌分解して「抗原提示」をして、
それを見たT細胞がB細胞にこの「抗原」に合わせた「抗体」を作れと命令して、
初めてその細菌やウィルスの鍵穴に合う鍵を持つ抗体ができるので、
あまりにも清潔すぎる環境に居るといざという時には役に立つ抗体が体内に無いという事になります。
ヒトも生き物ですから、過度な殺菌や抗菌には何処かに無理が出てきますので気をつけてください。
注)
上で抗原提示をT細胞が「見た」と書きましたが、T細胞に目がある訳では無く、
あくまでも比喩的な表現です。
でも、ホントに目が在ったらそれはそれで見てみたい気もします。
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細菌
B細胞
消化器官と免疫
樹状細胞
マクロファージ
T細胞
細菌やウイルスなどは自らの表面を相手(ヒト等の生体)の細胞の表面に結合させることで侵入し毒性を示すのが普通ですが、
「中和作用」といって細胞に侵入される前に抗体が抗原に結合してしまえば、細菌やウイルスの感染力を弱めたり、
毒素の毒性を減少させることが出来ます。
インフルエンザなどのウイルスでは相手の細胞に侵入するために、相手の細胞にくっついて互いの外膜同士を融合させて
自分のゲノムを細胞内に入れてしまう(感染)ドリルのような役目をする、HA(ヘマグルチニンまたはヘムアグルチニン:赤血球凝集素)と
呼ばれる抗原性糖たんぱく質をその表面に複数個持っているため、その一つ一つに抗体は大挙して結合しようとします。
また(細菌や昆虫、蛇などの)毒素は、
抗体とほぼ分子量(大きさ)が同じくらいなので1個の毒素には1個の抗体が当たると考えられています。
可変領域で細菌やウイルスなどの抗原に結合すると、ヒンジ領域が変化してそれが目印になり、
自然免疫系のマクロファージや白血球などがやってきます。
定常領域には「Fc受容体」と呼ばれるマクロファージや白血球などの貪食細胞と結合出来る部分があり、
結合すると「オブソニン化(またはオブソニン作用)」といって、貪食細胞たちの貪食作用を促進させる効果があります。
※貪食細胞は抗体が抗原と結合しているから食べやすいと言う訳です。ただ、抗体も抗原と一緒に食べられてしまう訳ですけど……合唱。
また「補体活性化作用」といって抗体自体も抗原と結合すると抗体の機能を補完する「補体」と呼ばれるタンパク質を活性化し、
自らがとらえている抗原と結合させます。
すると補体は「溶菌」または「サイトリシス」といって細菌の細胞膜を破壊して殺してしまうことが出来ます。
この補体による「免疫溶菌反応」は自然免疫の好中球や
マクロファージの貪食作用と同様に、
細菌等を直接破壊するという免疫系にとって重要な機能となっています。
これらの抗体は、ヒトのものだけでも大きく分けて5種類(IgG、M、A、E、D)が存在しています。
※自己免疫疾患(リウマチなど)
常に正常作動している抗体の免疫機能なのですが、
間違えてしまうこともあります。
普段は、外部からの抗原(細菌やウイルスなど)だけを標的として認識、攻撃するのですが、
この自己免疫疾患という病気になると「自己」と「非自己」の見分けがつかなくなり、自己の細胞まで異物として認識、攻撃することになります。
※ヒト以外の抗体
主に脊椎動物で存在が確認されています。
哺乳類はヒトと同じIgG、M、A、E、Dだけですが、それ以外(魚類、両生類、鳥類など)では、IgW、X、Y等も見られるようです。
ただIgMだけは免疫グロブリンの抗体を持つ生物の中では共通にみられるようです。
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細菌
自然免疫
マクロファージ
好中球
免疫
「IgG」(免疫グロブリンG)
血漿抗体の大部分を占め(ヒトの場合免疫グロブリンの70%以上)中和作用の能力が最も高いと考えられています。
Y字型の(抗体としては)ポピュラーな形(上記の「抗体の基本構造図」の様な)をしています。
「IgM」(免疫グロブリンM)
ヒト免疫グロブリンの10%程を占め、Y字型の基本形が5つ円形に結合した形をとっています。常に一定量が血中に存在して、
B細胞表面にあるときは最初に抗原の侵入を感知するのもこのタイプです。
B細胞が抗原に接触した時に、最初に産生される抗原でもあります。
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B細胞
「IgA」(免疫グロブリンA)
ヒト免疫グロブリンの10%以上を占めています。定常領域の先端(Y字型の下の棒の底)で、
結合している二量体IgA(pIgA)と単独の単量体IgA(mIgA)の二種類が存在しますが単量体の時の機能は良く分かっていないようですが、
血漿中ではmIgAの方が圧倒的に多いようです。
ただ、IgAの特徴は二量体のpIgAの方なのです。
IgAは粘膜上で産生(唾液や粘液、母乳、尿に多い)されると、
上皮細胞で産生された分泌タンパク質と結合して二量体のpIgAになって粘膜上皮細胞から粘液と共に分泌(分泌型IgAと言います)されます。
そして外から侵入してくる抗原(細菌やウイルスなど)へ、
消化管(結膜、鼻腔、尿路粘膜)などの粘膜上で結合してその活動を阻害しているのです。
特に、B細胞の約60〜70%が分布している腸管では血液中のIgGと、
粘膜上のIgAの二重構造の防衛ラインを敷いてヒトの体内で最も強力と言われている「腸管免疫」の重要な一端を形づくっています。
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B細胞
「IgD」(免疫グロブリンD)
数はヒト免疫グロブリンの1%程度と言われ、抗体を産生するときの(未成熟な)B細胞がIgMだけの産生から、
成熟して(IgMの)次に表出するのがIgDです。
この為、B細胞の成熟や抗体産生の誘導に関与していると考えられています。
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B細胞
「IgE」(免疫グロブリンE)
数がヒト免疫グロブリンの0,001%程度と極端に少ないのです。
消化管の寄生虫に対する免疫に関与しているのですが、逆にIgEが「肥満細胞」や「好塩基球」と結合して、
それらの細胞が「アレルゲン(アレルギー反応を起こすもの)」を持った抗原と結合した場合、
炎症(アレルギー反応)を引き起こすことが知られています。
ちなみにこの、IgEは1966年に日本人免疫学者の石坂公成・照子さんご夫妻が発見しました。
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