イソマルトオリゴ糖とは、基本的にはグルコース(ブドウ糖)という単糖で構成されているオリゴ糖で、
代表としてはグルコースが二つ結合しているイソマルトース(isomaltose)があります。
イソマルトオリゴ糖はα−グルコース(グルコースはαとβがあります)のα−1,6、α−1,3、α−1,2結合を分子内で一つ以上あるものを指します。
※α−1,6結合(他1,3・1,2も同様)はグリコシド結合とも呼びますが、というよりもグリコシド結合の中に入るのですが、
ここではイソマルトオリゴ糖の話ですのでα−1,6結合に限って進めます。
α−グルコースには炭素原子が6個(βにも6個あります)ありますが、この炭素には1番(No.1)
から6番(No.6)までの番号がルールに基づいて付けられているのですが、
α−1,6結合とはα−グルコース同士が結合する時、一方が自分の1番(No.1)
の炭素(C)原子に付いた水素と酸素(−OH)を出して、もう一方が自分の6番(No.6)
の炭素(C)原子に付いた水素と酸素(−OH)を出して、両方合わせて水素と酸素が各々2個ずつ出した状態から水(H2O)を取り除き、
残った酸素(O)原子を仲立ちにして1番(No.1)と
6番(No.6)の炭素(C)原子同士の結合を成立させます。
こうして出来たものがα−グルコースが2個α−1,6結合したイソマルトース、
3個結合したものをイソマルトトリオース(7個結合くらいまであります)と呼び、
これらを総称してイソマルトオリゴ糖と言う訳なのです。
※他のオリゴ糖も結合はグリコシド結合なのですが、一応代表としてグリコシド結合の説明をしてみました。
ちなみに、同じα−グルコースが2個のグリコシド結合でも1番(No.1)と
4番(No.4)の炭素(C)が結合するα−1,4結合をするとマルトース(麦芽糖)という
水飴などの主成分になってしまいます。
食品としては清酒、みりん、醤油、味噌といった日本の伝統的な発酵食品や大豆、蜂蜜にも微量に含まれていますが、
オリゴ糖単体での製造は原料としてトウモロコシやジャガイモなどのでん粉を使います。
このでん粉を酵素により分解液化したものを、再び酵素により分解糖化してから精製・濃縮すると液体のイソマルトオリゴ糖になり、
それを結晶化して粉末のイソマルトオリゴ糖にするという工程で作られていることが多いようです。
他のオリゴ糖と比較したイソマルトオリゴ糖の特徴として甘味の質は、
まろやかで旨味やコクがあるのでこれを癖と感じる人もいるようですが、和食の味付けにはこの旨味やコクが使いやすいようです。
そして、甘味度は砂糖の40〜50%と比較的低甘味で、エネルギー換算係数は砂糖と同じの4kcal/g 程度あります。
他の難消化性のオリゴ糖に比べると小腸内ではある程度消化(部分消化性)されるのですが、
でん粉などに比べると消化されにくいと言えるでしょう。
とは言え、イソマルトオリゴ糖は他のオリゴ糖に比べるとカロリーが高いので、
糖尿病等の生活習慣病をお持ちの方は砂糖の代わりにするならともかく、
これまでと同じ食事にプラスしてイソマルトオリゴ糖を摂取するのは主治医の方に相談してから決めた方が良いと思います。
また、熱や低pH(酸)に対し安定しているという点も調理には向いているのですが、
タンパク質やアミノ酸と一緒に加工すると褐変が起こりやすいという短所と、保湿性があり、
でん粉の老化を抑制して、食品のしっとりとした食感を保ち、
防腐性もあるため日持ちを向上させることができるという長所の両方を上手く使いこなすことが、
将来今よりも広範囲に利用されるカギになるかも知れません。
もちろん他のオリゴ糖同様に腸内のビフィズス菌
をはじめとする有用菌の増殖因子(栄養素)になるため、それら善玉菌の増殖活性化によって
免疫力の強化、悪玉菌等の有害菌の抑制、
そしてそれらが産生する腐敗産物の減少など「プレバイオティクス」としての作用により腸内環境を改善する事によって、
便秘・下痢などの整腸効果があるとされ、消費者庁から特定保健用食品(規格基準型)の関与成分としても認められています。
ただ、現在のところ整腸効果よりも保湿性や高い防腐作用を生かした人口防腐剤を使わない加工食品などの物性の方に
継続的なニーズが向いているようですが、オリゴ糖の中では価格が安く汎用的(使いやすいという意味も含め)に使用できるため、
最近では各種飲料の他、キャンディ、クッキー、和菓子、クリームなどの菓子類やデザート類、ヨーグルト、
アイスクリームなどの乳製品、調理済食品など広範囲の食品に利用されているようです。
※保湿性は、煮物類の煮崩れや菓子類の型崩れ防止に、防腐作用は、調理済食品の日持ち向上に効果があるといわれます。
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