EC-12乳酸菌


エンテロコッカス属フェカリス種とは

最近EC-12と呼ばれる乳酸菌の名前を良く目にするようになりました。


「最近風邪をひきやすくなったように感じる」とか「何となく体全体の調子が衰えてきた様な気がする」 という具合のどこがどう悪い訳では無いのだけれど……という小さな不調をため込んできてしまったという方に 向いているタイプの乳酸菌です。


エンテロコッカス(Enterococcus)属フェカリス(faecalis)菌EC-12株というのが正式名称なので、 腸球菌に属する球形状の乳酸菌の仲間になります。


エンテロコッカス属の特徴といえば、 細長い形の桿菌が多くを占める乳酸菌では珍しく丸い形の球菌であるという事と、 ヒトの体内に常在している常在菌であると言う事ですが、それ以上に弱病原性を持つことがエンテロコッカス属の珍しいところでしょう。


確かに善玉菌、乳酸菌といってもヒトの体から見ればいずれも「異物」です。 免疫機能から見ればそれは即ち排除しなければならない対象という事になりますし、 弱いと言えども病原性を持っていればなおさらです。
しかし、それ故に高い免疫向上機能がこの属菌には存在するのです。


特に、エンテロコッカス・フェカリス種の細胞膜は腸管内パイエル板下の 樹状細胞に異物と認識されやすい多糖類なのだと推測されています。 そのためパイエル板表面のM細胞から侵入した エンテロコッカス・フェカリスは侵入した途端にそのすぐ下で待ち構えている 樹状細胞という貪食細胞に捕らえられその中で捕食・分解されてしまいますが、 その後エンテロコッカス・フェカリスの抗原が 樹状細胞表面からヘルパーT細胞へ提示されるのですが、 この提示が他の菌よりも提示されやすいと考えられているのです。


その結果としてヘルパーT細胞が受け取る抗原提示が増加し、 そのヘルパーT細胞からの指令で抗体(免疫グロブリン) を産生する免疫細胞であるB細胞が刺激され 抗体の産生が活発になるといわれています。つまり、弱病原性のエンテロコッカス・フェカリスは 加齢やストレス等の様々な理由で衰えてきた免疫機能を再び活性化するための「免疫細胞の練習相手」にうってつけなのです。


また、エンテロコッカス・フェカリス種はコレステロールや中性脂肪の低下作用、整腸作用があるとされ、 腫瘍、アレルギー、自己免疫疾患などへの応用も期待され研究されているようです。



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EC-12乳酸菌とは

エンテロコッカス・フェカリスを乳酸食品やサプリメントとして摂取する場合、やはり第一の特徴である免疫機能への 働きかけに期待が出て来ると思います。


その為には通常のビフィズス菌など他の乳酸菌の 乳酸食品やサプリメントの様に生きたまま腸まで運ぶ必要はなく、どちらかといえば免疫活性化に必要な部分だけを大量に 腸まで(腸管内のパイエル板まで)届けることの方が 合理的なのだと考えられています。


そのためEC-12は、通常では殺菌された状態(死菌)で乳酸食品やサプリメント等に使用されています。
死んだ菌で大丈夫なのかと思われるかもしれませんが、腸管免疫機能を刺激するのにはそれで十分なのです。


上記の様に、免疫機能を向上させる為の刺激を与えるのに必要な部分は、主に多糖類(多糖体)で出来た エンテロコッカス・フェカリスの細胞膜ですから、苦労して生きたまま腸まで届ける技術を開発するより いっそ加熱処理で殺菌して濃縮したものなら胃酸や胆汁の消化にも関係なく腸内免疫細胞達まで届き、 免疫機能向上と言う目的は果たせる訳です。


弱病原性という部分も殺菌してしまえば何の心配もなくなりますから一石二鳥といえなくもありません。


この様にEC-12とは乳酸菌の中でも珍しい「免疫機能の向上機能に特化した」ものであり、 特に、腸管粘液中の分泌型IgA抗体や 血液中のIgG抗体を増加させる機能に優れている。
ある意味では一種のワクチンに似た様な機能を持ったものであり、プロバイオティクスとしても 非常に目的のはっきりとしたものだと考えられるのではないでしょうか?



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