なにぶん相手は目に見えないのですから、私たちの祖先が猛獣に襲われた時の様に避けるわけにもいきませんし、
私たちに接触するように生きている相手ですから、近寄らないでいるというのも現実的ではありません。
では、細菌達に抵抗する力とは具体的にはどんなものなのでしょうか?
まず細菌などの異物が体内に侵入してきたことが判らなければ何も始まりません。
そこで自然免疫として最初にマクロファージ等の貪食細胞が、
侵入者とおぼしき相手が自分か自分でないかの判断をします。
ここで自分ではないと判断されれば「食作用」という捕食に掛かり、相手を殺菌分解していくのですが、
この場合は相手が、正常な状態ではなくなった「元は自分の細胞」だったものも含まれます。
相手が少数の時はこれで解決するところなのですが、細菌の数は私たちの細胞の数とは比べ物になりませんから、
毎回これで終わりと言う訳にもなりません。
そこで貪食細胞は食べ終わった相手の情報をもっと強力な免疫細胞達に伝える能力があります。
それが「抗原提示」です。
この抗原提示を受けてT細胞やB細胞等の強力な免疫細胞達が機能をはじめて行き、
そしてその一部は記憶細胞として獲得免疫を司る中心になっていくのです。
ただし、残念ながら私たちは生まれた時点でまだ完全に免疫は機能していないのです。
土台だけはしっかりしたものがあるのですが、その上の骨組みや壁、屋根などは自分で作っていかなければなりません。
つまり自然免疫は生まれた時点でほぼ機能しているのですが、
獲得免疫の方は記憶に頼る部分があまり機能していません。
ヒトは胎内では無菌状態ですから、生まれたその次点から獲得免疫系を使い
環境内の細菌等の洗礼を受けながら
彼らを記憶し彼らに抵抗する力を獲得して行かなければならないのです。
でもこれには時間が掛かりますし、特に若いうちに記憶しなければ、齢をとって免疫機能そのものが衰えてからでは
免疫の記憶の効率も良くないでしょう。
最近「除菌」とか「抗菌」という言葉をよく聞くようになりましたが、
免疫の記憶を形づくるという事を考えるとあまり良くないような気もします。
もちろん、まだ免疫機能が発達していない子供たちや、
体力そのものが衰えている病人の方やお年寄りには必要不可欠なものですが、
基本的に体力があり年齢もそれほどでもないのであれば(まだ自分は若いと思えるのなら)出来るだけ
使用は控えた方が結果として良いのではないかと考えます。
ただし、くれぐれも無理はしないようにお願いします。
世間でノロウイルスやO157などが流行しているときは迷わず使いましょう。
ヒトが先祖代々育んできたとは言え、まだそこまでは免疫機能も完璧ではないのですから。
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