「大腸菌」(Escherichia coli)エスケリキア属コリー
グラム陰性菌
稈菌
通性嫌気性菌
哺乳類、鳥類の消化管内等に生息、ヒトの生活環境に良くみられる。
菌表面の「抗原」の違いにより分類されています。
具体的には
O抗原(細胞壁外膜のリポ多糖による)におけるものが160〜170種類ほど
H抗原(鞭毛による)におけるものが40〜50種類ほどで
これらの「O」と「H」各々の抗原の組み合わせで種類分けされています。
これを「O:H血清型」呼びます。
例えば、最近よく聞く「O157」という名前の大腸菌は「O抗原」としは157番目
(に発見された)のものという事になります。
その上で「H抗原」の番号も付いてきてO157:H7(腸管出血性大腸菌としては有名です)
という具合に名称が完成するのです。
ただ、OH両方の抗原が必ずしもそろっていないもの、例えばO抗原が157だけのものや、
両方揃っているO157H7と同じ血清型なのに病原性を持っていない場合も見られ
ることもあり、少し複雑ですがこれはあくまで例外と考えた方が病原性大腸菌を
予防するうえでは良いと思います。
いずれにしても大腸菌は、この様に非常に多くの種類=「株」が認められますが、
ほとんどの物はヒトには無害か健康な成人なら下痢を起こす程度のものですが、
その様な無害に近い菌種でも血液中や尿路系に感染すると内毒素による敗血症などの
病気の原因菌になり得る事もあります。
もちろん「O157」に代表される「病原性大腸菌」に関しては強い毒性が(通常は)
認められるため細心の注意が必要なのはいうまでもありません。
※ところで、大腸菌と言う名前からしてヒトの腸内とくに大腸にうじゃうじゃと沢山いる様な
イメージが有るかも知れませんが、数量としては割と少なく確かにヒトの常在菌として必ず
居る菌なのですが、腸内細菌全体の0.01%程度に過ぎないと言われています。
どちらかと言えば、腸内では圧倒的にバクテロイデス属(Bacteroides)や
ユウバクテリウム属(Eubacterium)などの「日和見菌」と呼ばれる菌の方が圧倒的に多くみられるのです。
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病原性大腸菌
大腸菌はヒトと同じ環境に存在して、基本的にはそのほとんどは人に害を加えることは少ないのですが、
ある種の大腸菌は腹痛や下痢を起こす胃腸炎(つまり食中毒)の原因となりえます。
これらを「病原性大腸菌」または「下痢原性大腸菌」と呼び、O157は5種類ある病原性大腸菌の中でも
有名になっています。
O157は「ベロ毒素」を出す「ベロ毒素産生性大腸菌(腸管出血性大腸菌)」のひとつで感染力が強く、
低温(冷蔵庫・冷凍庫)や酸(胃酸)にも強いと言う厄介な菌というだけでなく、感染した場合に胃腸炎による
下痢や腹痛だけでなくO157が作り出すベロ毒素によって溶血性尿毒症症候群(HUS)や、けいれん、意識障害などが
起きることも報告されています。
病原性大腸菌(下痢原性大腸菌)には以下の5つがあります。
腸管病原性大腸菌(病原血清型大腸菌)EPEC
腸管侵入性大腸菌(組織侵入型大腸菌)EIEC
腸管毒素原性大腸菌(毒素原性大腸菌)ETEC
腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)EHECまたはVTEC
腸管集合性大腸菌 EAggEC
※「ノロウイルス」も怖いですが、病原性大腸菌にも気をつけてください。
いずれにしても、食事前や調理時の入念な手洗いが第一歩になります。
その上、最近は季節に関係なく食中毒はありますご注意を!
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