乳酸菌


乳酸菌とは?

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乳酸菌とは?
細菌というと、バイ菌のイメージがあってあまり良い印象を持てないかもしれませんが、 ここで取り上げる乳酸菌も、その細菌の仲間です。


世の中にたくさんある細菌の仲間の中でもかなり有名なので、ご存じの方も多いと思います。
ヨーグルトなどのいろいろな乳製品や、味噌や漬物などの発酵食品の中に入っているアレです。
厳密には、中に入っているというよりも、製造する過程で中に入れるものですが……、
とにかく体に良いというヨーグルトなどに入っている、その体に良いオオモトの部分ですネ。


その乳酸菌は微生物の中の細菌の仲間なのですが、 似たようなものの中でも、カビや酵母も微生物の仲間に入りますが、細菌とは呼びません。


細菌はその細胞膜で外の環境と区切られている単細胞生物ですが、 その種類や環境によっては同じ種類のものが複数が集まって、塊のような集合体を形成することもあります。


また、細菌は「原核生物」と呼ばれる仲間でもあります。
この仲間は、細胞の核がないために遺伝子であるDNAなどの核物質が、細胞質の中に裸のまま存在して、 しかも分散しています。
遺伝子があまり大事にされていない様なイメージでしょうか。


つまり、同じ微生物でもDNAなどが大事に核に入れられている、 カビや酵母などの「真核生物」とは基本的に異なる生物種として分類されています。


細菌類以外の微生物、多細胞生物(植物、動物)はだいたい「真核生物」です。
勿論、私たち「ヒト」も真核生物の仲間なので、細胞の中では遺伝子が大事に核に仕舞われているわけです。


生物はその大きさによって発見(知られている)されている「種」の数が変わってきます。
例えば「ヒト」よりも大きな生き物はたいてい植物図鑑や動物図鑑に載っています。


※ヒバゴンやビッグフット・イエティの類は、話が複雑になるので、ここでは考えないことにしましょう。


ところが「昆虫」になると今でも新種などが発見されることも珍しくありませんし、 それが「細菌」の仲間だと未だに発見され続けていると言うより、 まだほんの一部しか私たち人類は知らないと言うのが現状のようです。


※現在の段階で、全部でこれくらいいるのかなと推定されている細菌の、 全種数の内の5〜10%程度が見つかっていると言われています。
中には1%にも満たないのではないかとの意見もあるようです。
いずれにしても分離・培養されていない(難しい)為、命名どころか発見もされていない 細菌がまだまだ沢山あると言う事でしょう。



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細菌


乳酸菌の分類

「乳酸菌」というのは一種類とか特定の菌ではなく、ブドウ糖や乳糖などの糖類(炭水化物)を発酵・分解して自らが使うエネルギーを獲得し、 その際多量の乳酸を産生し、かつ、悪臭の原因になりうるような腐敗物質を産生しない細菌の総称です。


また細菌の分類法の一つである「グラム染色法」では陽性反応が出る事が知られています。


ちなみに同じ腸内に住む細菌の仲間でも 大腸菌などは陰性の反応が出ると言われています。


※グラム染色(Gram staining)法とは、主として細菌類を色素によって染色する分類法の一つです。



その「乳酸菌」の中でも乳酸のみを作る「ホモ乳酸発酵菌」と 乳酸のほかアルコールや酢酸なども同時に作る 「ヘテロ乳酸発酵菌」とに分類されているのと、「乳酸菌」自体の形状の違いから、丸い形の「乳酸球菌」と、 棒状の「乳酸桿菌(かんきん)」という分類もあります。


その他、乳酸菌の細菌としての特徴には過酸化水素を分解する酵素を持たず(カタラーゼ陰性)、芽胞(内生胞子)を作らず、 運動能力の無いものが多く、嫌気性(酸素のある環境でも増殖などの生命活動が出来ない訳ではありません)です。



細菌は、その生存・増殖に酸素を必要とするものとそうでないものがあります。 それによっての個々の細菌を分類出来たりもします。


好気性(菌)     酸素がある環境を必要とする
通性嫌気性(菌)  環境中に酸素があってもなくてもあまり影響がない
偏性嫌気性(菌)  酸素が無い環境を必要とする


以上の分類がありますが乳酸菌は嫌気性なので通性嫌気性か偏性嫌気性のどちらかとなります。



また低pH条件下(pHが6よりも低い)で良く増殖できるため、自らが産生した酸(乳酸)によって周囲の環境を弱酸性に変えることで、 他の微生物の繁殖を抑制して、自らの増殖を有利にしているという共通性もあります。


※低pHとは酸性・アルカリ性の酸性のことです。
ちなみに、最近では「pH」を「ペーハー」ではなく「ピーエッチ」と呼び、「アルカリ性」ではなく「塩基性」というらしいです……。


このように自らの外環境(ヒトの腸管内)を酸性にすることが、結果として蠕動運動を躍起して便秘などの改善に役立つと考えられています。
そのため人体にとり有益な作用を持つ生きた細菌、またはその効果をもたらす食品であるプロバイオティクスの代表として乳酸菌や ビフィズス菌が「善玉菌」として取り上げられる事が多いのです。


※いずれにしても乳酸菌は腸内では一週間前後の寿命ですから、何らかの方法で新たに乳酸菌を腸内に送るか、 腸内で育てるか、増殖させるかが腸内のひいては体の健康に不可欠になると考えられています。



また、乳酸菌の(便宜上の)分類として「動物性乳酸菌」と「植物性乳酸菌」という分け方もあります。


「動物性乳酸菌」
乳糖を分解して乳酸を作る。各種乳酸飲料、ナチュラルチーズ、発酵バター、ヨーグルトに含まれています。


酸に耐性がないため消化液に弱い菌が多く、生菌のままで腸管までたどり着けない場合がある一方で、 乳酸飲料やヨーグルトなどに多くみられるため一定量を連続して(毎日)摂取しやすいと言う面があります。


最近では腸まで生きたまま届く様に加工したり、酸に耐性のある菌種の発見があったり、と使用し易くする研究が続けられています。


「植物性乳酸菌」
ブドウ糖や果糖を分解して乳酸菌を作る。醤油、味噌、漬物、キムチ、ザワークラウトに含まれています。


pHの増減(酸性、アルカリ性)に耐性が見られ、生存の温度帯も幅があるので消化液等にも耐えて腸管まで生きたままたどり着く 可能性が高い菌です。


便秘改善や免疫系、アレルギーに効果が期待されています。


ただし味噌、醤油、漬物と、どうしても塩分と一緒に摂ることの多いのが欠点になります。


※健康な状態のヒトに普通に消化管系にみられる常在菌の一種としての乳酸菌として「腸管系乳酸菌」という分け方もあります。



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細菌
大腸菌
乳酸
酢酸


乳酸菌の主な種類と特徴


ラクトバチルス(Lactobacillus)属、またはラクトバシラス属

グラム陽性
桿菌(狭義には「乳酸桿菌」と呼ばれる属)
ホモ乳酸発酵 ヘテロ乳酸発酵
植物性乳酸菌・動物性乳酸菌・腸管系乳酸菌


ヒトの生息環境から簡単に入手出来るためヨーグルトなどの製造に古くから使われていた為に、 現代でもプロバイオティクスとして多くの乳製品などに使われています。


乳酸菌を代表する「属」でヒトだけでなく動物の消化管にも多く生息しています。


ここに属する「ラクトバチルス・カゼイ・シロタ(Lactobacillus casei Shirota)株は 「ヤクルト菌」「LCS」と呼ばれている有名な菌株です。


ラクトバチルス・ブルガリクス菌(ブルガリアヨーグルトの「ブルガリア菌」)
ラクトバチルス・アシドフィルス菌(常在菌)
ラクトバチルス・カゼイ菌(発酵乳、乳酸菌飲料)
ラクトバチルス・ガッセリー(gasseri)菌またはガセリ菌またはギャセリ菌(常在菌)
           胃酸・胆汁に強いため生菌のまま腸に届きやすく自らの外部環境
           を弱酸性に変えるためいくつかの病原菌やウイルスに効果がある
           と認められている
           コレステロール値の適正化にも影響を与えるため肥満予防にも
           効果が期待されている
           体内での抗酸化作用についても研究が進んでいる
ラクトバチルス・ヘルベティカス菌またはヘルベティクス菌(チーズ、発酵乳、乳酸飲料)
ラクトバチルス・ブレビス(ラブレ)菌(漬物菌)
ラクトバチルス・ブランタルム菌



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ラクトバチルス


ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属

桿菌(多形成桿菌) 偏性嫌気性 増殖の時V・Y字型に枝分かれすることがある。
ヘテロ乳酸発酵


俗に「ビフィズス菌」と呼ばれるもので母乳栄養児の消化器官中最も多く存在する菌だが加齢と共に急速に減ってくると言われる 「善玉菌」と呼ばれている物の中では有名です。
そのため「ラクトバチルス属」同様プロバイオティクスとして乳製品やサプリメントに利用されることが多いようです。


他の乳酸菌と性質の違いが大きいため乳酸菌とは別の種類と考えられてもいるため、 一般的には「ビフィズス菌」とだけ呼ばれ「乳酸菌とビフィズス菌」などと分けて呼ばれることが多いようです。


ビフィドバクテリウム・ビフィダム菌
ビフィドバクテリウム・ロングム菌またはロンガム菌
ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス菌またはアドレッセンティス菌
ビフィドバクテリウム・ブレーベ菌(発酵乳、乳酸飲料)
ビフィドバクテリウム・インファンティス菌



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ビフィドバクテリウム


エンテロコッカス(Enterococcus)属、またはエンテロコックス属

グラム陽性 球菌 連鎖状 通性嫌気性
ホモ乳酸発酵


おもに回腸、盲腸、大腸に生息する腸管系乳酸菌。


弱い病原性を持つが宿主が健康であれば問題無い程度、しかしそれを補って余りある特徴として非常に高い 免疫向上機能があるため、近年ではプロバイオティクスとして (「死菌」の方が免疫系を刺激する効果が高いといわれています)整腸剤の他にサプリメントなどにも利用されています。


エンテロコッカス・フェカリス菌(新型乳酸菌として注目、ヨーグルトなどに利用されだして
                   います。)
エンテロコッカス・フェシウム菌(発酵乳、チーズ)



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エンテロコッカス
免疫


ラクトコッカス(Lactococcus)属、またはラクトコックス属

グラム陽性
球菌(狭義に「乳酸球菌」と呼ばれる属) 連鎖状・双球状
ホモ乳酸発酵
動物性乳酸菌


牛乳や乳製品(チーズやヨーグルトなど)の製造に良く用いられています。


免疫系を活性化する作用を期待されると言われている 「プラズマ乳酸菌」と言われているのがこの「属」です。


ここに属する「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス・エフシー」 は「カスピ海ヨーグルト」の種菌として有名な乳酸菌です。


ラクトコッカス・ラクティス菌
ラクトコッカス・ガルビェ菌



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ラクトコッカス
免疫
カスピ海ヨーグルト


ペディオコッカス(Pediococcus)属、またはペディオコックス属

グラム陽性
球菌 四連状
ホモ乳酸発酵
植物性乳酸菌


味噌・醤油・漬物・ピクルスやキムチなどの植物発酵に関与(特に味噌、醤油の熟成には無くてはならない)し、 高い塩分濃度内でも活動可能な特徴を持っています。


何の加工もせず素のままでも胃酸を潜り抜け生きたまま腸まで届くことが可能といわれています。


ペディオコッカス・セレヴィシエ(ダムノサス)菌
ペディオコッカス・ハロフィルス菌
ペディオコッカス・ペントサセウス菌
ペディオコッカス・アシディラクティシ菌





ロイコノストック(Leuconostoc)属、またはリューコノストック属

グラム陽性
球菌 連鎖状・双球状
ヘテロ乳酸発酵


漬物・ザワークラウトなどの発酵に関与し(ヘテロ乳酸発酵で乳酸以外に 酢酸も産生するため漬物には向いている)、 整腸作用があります。


リューコノストック・メゼンテロイデス菌(発酵バター、発酵乳、チーズ)



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乳酸
酢酸


ストレプトコッカス(Streptococcus)属、またはストレプトコックス属 レンサ球菌属

グラム陽性
球菌(「レンサ球菌」と呼ばれる属) 連鎖球菌
ホモ乳酸発酵
動物性乳酸菌・腸管系乳酸菌


通性嫌気性・偏性嫌気性の有機栄養菌、酸素の有無に係わらず乳酸発酵でエネルギーを得る人由来の乳酸菌です。


a,b,y各々の溶血性(赤血球を破壊する)があるため危険(病原性)な要素もあるが、近年は獲得免疫系を 発達させるうえでの重要な要素として安全に利用できるようになり、また人体に有用(当然無害)なものはヨーグルトやチーズの種菌としても認められています。


※言い方を変えれば、病気の元となる要素を少なからず備えている為、これを体に取り込むことによって、 体に(免疫細胞達に)「これは病気の元です」と覚えこませる教科書の様な存在なのです。
「次にこれと似た様な(もっと強力な本物の病原菌)異物が体に入ってきたら退治しなさい」と言う訳です。


ストレプトコッカス・サーモフィルス菌(ヨーグルト、発酵バターやチーズの製造には欠か
                      せない菌)



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ストレプトコッカス
獲得免疫
免疫


テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、またはテトラゲノコックス属

球菌 四連状
植物性乳酸菌


pH増減での耐性があり塩分の高い環境でも増殖が可能な属種で、生菌を腸管まで届けることが容易だといわれています。


整腸作用だけでなく、胃酸の改善や免疫機能への刺激にも効果があるといわれています。


特に、この属の「ハロフィラス種Th221株」はアレルギー反応の原因のひとつである 「抗体IgE(免疫グロブリンE)」の産生を抑制する 「IL-12(インターロイキン12)」というサイトカイン(免疫細胞間の話し言葉の様な物質) の産生を促す効果が期待されているといいます。


テトラジェノコッカス・ハロフィラス(ハロフィルス)菌(醤油など)



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抗体


補足

※ヨーグルトに良く用いられるポピュラーな乳酸菌としては
ラクトバチルス・ブルガリスク菌(ブルガリア菌)
ストレプトコッカス・サーモフィルス菌(サーモフィラス菌)
などが挙げられます。



※また、乳酸菌ではありませんが関連物質として ラクトフェリン(Lactoferrin)があり、 効果としては、抗菌・殺菌作用が強く感染症予防に効果が期待されています。
その上、まだ研究段階ながら抗がん作用も確認されているほかに、 中性脂肪とコレステロールの減少に関与が期待されています。



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