ケフィア(kefir)


乳酒とケフィア

「乳酒」とは日本では見られないものですが、ユーラシア大陸の様々な地域で家畜などの乳から 作った酒がむかしから飲まれているのです。
牛乳の他に、羊乳、馬乳などの乳を発酵させて作る発酵酒(醸造酒)というもので、 まとめて「乳酒」と呼ばれています。
日本の近くだとモンゴルの馬乳酒が有名なのでテレビで見たという人も多いと思いますし、 最近ではモンゴルへ旅行した時に飲んだことがあるという人も居るかも知れませんネ。


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乳酒のケフィアとは同じユーラシア大陸でもずっと西の方、黒海とカスピ海に挟まれて高い山岳地帯になっていて カスピ海ヨーグルトで有名なコーカサス(カフカス)地方で昔から作られていたもので、 牛や山羊、羊などの乳を原料として作られている物で、現在では、旧ソ連全域の他に北欧でも作られているようです。
ただしケフィアの場合は乳酒といっても日本でいう酒類と比べアルコール度数も1%前後かそれ以下とかなり低いので、 解かりやすく言えば「酒」というより「飲むヨーグルト」に近いものになると思います。


2014年の冬季オリンピックが開催されたソチもこの辺ですから、オリンピックのついでに本場のケフィアを一杯飲んできた方も いるのではないかと思います。


※日本の酒税法でもアルコール度数が1(1%)以上のものが「酒」という定義ですから法律上も種類とは別物になります。


※もっとも乳酒の中には蒸留してアルコール度数を上げてあり、飲めば酔っぱらうくらいのものもあるようですが……。


どちらにしても乳酒というものは、農耕民族というよりは遊牧民族が日常のバランスのとれない肉食中心の食生活で不足しがちでなおかつ、 とても貴重な野菜や果物を補うものとして、老若男女に飲まれ続けてきたものなのです。
現に、中央アジアに住む遊牧民族の中では栄養価の高い飲み物として現在でも子供が日常的に飲んでいる様子などをテレビで見たことがあります。


※代表的な乳酒としてはケフィアの他に、中央アジアのクミス(kumis)や東欧のウルダ(urda)等が知られています。



ケフィアグレイン

当然の事ですが馬乳酒は馬乳が無ければ作れませんが、ケフィアは羊乳、山羊乳、牛乳などから作れます。
ただしヨーグルトに牛乳(牛乳以外の乳でも出来ます)と乳酸菌(種菌)が必要なように、 ケフィアには(入手しやすい)牛乳の他に「ケフィアグレイン(Kefir grains)」と呼ばれるヨーグルトでいう種菌 のような物が必要になります。


※ケフィアグレインはケフィア粒やケフィア・スターターなどとも呼ばれていますが、その見た目から「ヨーグルトきのこ」とも呼ばれています。


ケフィアグレインは「ケフィラン」という粘性のある多糖の中に酢酸菌や Lactococcus(ラクトコッカス)属等の乳酸球菌の他、 Lactobacillus kefiri(ラクトバチルス・ケフィリ) Lactobacillus kefiranofaciens(ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス)の乳酸桿菌、 Kluyveromyces marxianus(クルイベロマイセス・マルキシアヌス)等の酵母など何十種類もの微生物が共存している「微生物の凝集塊」と呼べるものです。


このため生乳を乳酸菌が発酵するところだけはヨーグルト等と同じなのですが、 ケフィアはヨーグルトとは違い多数(十数種類〜数十種類)の乳酸菌が(ヨーグルトの種菌の場合は通常1〜2種類程度)発酵に係わるのと同時に 酵母も発酵に加わりアルコールが産生されるのです。




ケフィアの特徴

また、ケフィアの特筆したい部分としては(乳酸菌による乳酸発酵の方はともかく)酵母によるアルコール発酵によりアルコールと炭酸ガスが発生するために、 微かに発泡酒の様な飲むヨーグルトといったケフィア独特のものになるのですが、 このガスは製品として店頭に並んでいる間も発生し続けるために海外ではケフィアの容器にはガス抜き用の穴が開いています。


しかし日本の食品衛生法では食品の梱包は密閉状態でなければならない決まりがあるので、残念ながら日本ではケフィアの状態では販売できません。 そのため日本で手に入るのは自宅で作るケフィアの種菌か、サプリメントだけという状況なのです。


また前述の乳酸桿菌によって産生される粘性のある多糖のケフィランには血糖値や血圧上昇の抑制効果、 血中コレステロールの増加抑制、肝機能や免疫機能の向上効果の他に抗炎症作用などが期待されています。


※ケフィランに限らず粘り気のある食物は体に良いものが多いです。例えば納豆の粘りや海藻の粘りなんかそうですよネ。


そしてもちろんケフィアの方にも乳酸とカルシウムが結合して吸収力が高くなった乳酸カルシウムや ビタミンA、B群にプラスして乳酸菌自身もプロバイオティクス(probiotics)成分として挙げておきましょう。


※酢酸菌が作った酢酸(お酢)も体に良いです。特に整腸作用がありますヨ。


またヨーグルトなどの数種類の乳酸菌だけによる単独発酵とは違う数十種類の乳酸菌と酵母による発酵を行う共生発酵するケフィアは、 酵母菌と乳酸菌の両方の発酵で栄養成分が分解されているためそれらの消化吸収にも差が見られますし、 葉酸の含有量が(熟成によっては)多く、乳糖(ラクトース)の消化を助ける作用もあるようです。


※それにしても法律(食品衛生法)はどうにかならないものでしょうか?
キチンと冷蔵してある陳列棚で販売すれば雑菌とかには大丈夫だとおもいますけれど。
それかケフィアだけは例外扱いにするとかならないものでしょうか……、多分ならないでしょうネ。
雑菌といっても結構怖いものがいますから。


最後に話がいきなり変わりますが、ケフィアはそのまま飲むよりヨーグルトの様に果物と混ぜてスムージーにしたり、 シリアルにかけたりするのもアリだと言いますが、乳酒なのだからワインなどで割っても良いかも……?
……あっ!これだと酒で酒を割ってしまう事になるのかな?



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